| 岩手県稗貫郡大迫町の山村に未完成の土蔵がひっそりと建っていた。引き取り手がいなければ、解体処分されてしまう土蔵だった。
出会いは、2003年の秋。左官職人の山田さんが、当社の会長に声をかけた。「いい土蔵があるんだけど、壊すにはもったいないし、誰か引き取り手はないか?」
早速、現地を見ると、山の木々を背景に、プロポーションの好い、土壁のまま、化粧塗りがまだされていない土蔵があった。――「この土蔵を再生させたい!」一目惚れだった。
具体的なプロセスの中で、まず、解体届を花巻市の土木部に提出した。木部構造躯体、土蔵の土、基礎となる石、すべてを、そのまま使うように届出をした。「究極のリサイクルですね」担当者の方から言われた。
解体工事が始まった。ワインレッドの屋根瓦は、残念ながら、凍害による損傷が多かったため、そのまま使うことはできなかった。が、骨組みは、頑強ですばらしかった。通し大黒柱や、屋根全体を支える牛梁。柱を梁半分内側に絞り込んで立て込んである構造体が剥き出しになると、当時の職人の技のすごさに感服させられる。
移築先は、岩手県岩手郡滝沢村のゆい工房敷地内。
いよいよ建築が始まった。基礎は、地中梁を配したベタ基礎。現代の建築基準のため、金物等で結束をしながら、構造躯体を組み上げる。屋根が二重構造になっている。小屋裏の換気が十分にできる構造だ。暑さ寒さから土蔵内を護る工夫がなされている。
荒壁をぬって、十分な養生期間をとる。養生期間に、殴りつけるような雨で、土の一部が崩れそうになったりしたこともあった。パッパとできあがるプレハブとは違い、手間ひまかかる作り方だ。それだけ思いが込められ、心が込められるから、簡単に「壊してしまえ」といえない建物になるのだろう。
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