浄法寺塗り、若き職人の肖像 その1
小田島勇さんとの出会い
久しぶりに浄法寺に行った。
現在は二戸市となったが、少し前までは漆の里・浄法寺町として知られていた。
今回の旅もこの風土に受け継がれてきた浄法寺塗りを訪ねるものだった。
向かった先は東北最古の古刹として名高い、天台寺の入り口にある滴生舎。
浄法寺塗りの殿堂として、伝統の技と文化を今に伝えている施設だ。
この滴生舎で塗師として研鑽の日々を送っているのが小田島勇さんだ。
以前、小田島さんは塗りではなく、
木地職人として漆器製作に関わっていたのだが、数年前より塗師の道へと歩み始めた。
僕が小田島さんと出会ったのは2年前のこと。
「まだまだ修行の身。仕上げ塗が半人前だったんですが、
最近やっと仕上げができるかなという自信がついてきました」と語り、
最近塗ったという漆器を見つめたまっすぐなまなざしが印象的だった。
そのとき、小田島さんが仕上げたというのは
工程が複雑な木地蝋塗の杯で、ウワミズザクラの木地だという。
また「杯のことを、この土地では“こぶくら”と呼ぶんですよ」と教えてくれた。
そこで、そのこぶくらを購入させてもらい、
以来、どこか気持ちの余裕があるときに、
美しく澄んだ漆をまとったこぶくらを取り出し、日本酒を注いだりしている。
※2007年の記事です