「バウビオロギーという思想」その1
2016/05/01(日)
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「バウビオロギーという思想」発行:建築資料研究社 アントン・シュナイダー著(前橋工科大学教授・石川恒夫訳)は、ドイツでは「建築生物学」という一つの建築カテゴリーになっている「バウビオロギー」を日本で本格的に紹介した労作である。
「建築は人間に奉仕するもの」というシンプルな定義がバウビオロギーの前提にある。つまり人間との関係性の中でこそ(人間の健康に奉仕してこそ)住まいはその価値を認められる。
人体に悪影響を及ぼす可能性のある有害化学物質は極力排除し、自然界に本来的に存在する素材(マテリアル)を活用し住まいはつくられなければならない。
現在の日本で、化学物質を含む素材(化学建材)からの脱却が進まないのは、大量生産型のプレハブメーカー主導の住宅施策に原因があるだろう。
大量生産型の工業化製品は、クレームは命取りだ。プレハブメーカーは、メンテナンスリスクのある自然素材を扱う事はできない。そこで誕生したのが絶対に狂いのおきない「化学建材」だ。
この「化学建材」はまたたく間に日本の住宅業界を席巻してしまった。
プレハブメーカーだけが「化学建材」を使用していれば良かったのだが、地場産業の担い手であるべき工務店もこの流れに追随してしまった。
経済至上主義で成り立っているように見える現在の日本の住宅業界。「バウビオロギー」の思想がまっとうな評価を獲得するのはまだまだ先なのかも知れない。