散居のまちでは、「エグネ」「イグネ」とか言われた、
家を囲むように植えられた屋敷林が、現在でも有効に働いています。
かつて、萱で葺かれた屋根のまがり家やすご家では、
強風雪から住居を守る防風林は欠かせないものだったと思います。
今日のような、強い北風から家を守るための、知恵だったと思います。
しかし近代化された街では、その植栽がどんどんと大きくなり、
屋敷林は無用のものになりつつあります。
建物の外部仕上げ材なども、より耐久性のあるものへと変化してきましたので、
必要を感じることが少なくなりました。
思い出の記念樹として植えられた木も、その経緯を知る人がいなくなってしまいますと、
広がる枝葉やどこまでも伸びる根、落葉の処分なども含め、
残されたご家族は、その管理をどうしようかと途方に暮れてしまうこともあります。
現在、景観条例等で、住宅の建築計画の際に、植栽計画が求められる地域もありますが、
将来の管理等も考慮に入れたものにしていかなければと思います。
巨大に成長していく木や、落葉が大量に発生する木、細やかな手入れが求められる五葉松などは、
近年の庭木では敬遠され、
細い株立ちの沙羅の木や、管理のしやすいさつきつつじなどの低木で、
街並みを整えることが、多くなっています。※無植栽ということも実際は多いです。
味気ない環境を、植栽で彩ることは、とても大切なことと心得てはいますが、
かなり長期的な視点に立って考えることが求められると感じるこの頃です。