●断熱性能一辺倒でいいのか?

2008/06/12(木) 未分類
「次世代省エネ基準」が、家の断熱等級を決定する最新のルールだったのですが、さらに高性能の断熱性能の家を建築していこうという動きがあるようです。

簡単に解説すると、断熱材の厚みをもっと増やしましょう(最近は壁厚が30㎝もある無暖房住宅なる商品まであるようです・・・)。家の隙間をもっとなくして気密の高い家にしましょう(隙間相当面積を1平方㎝以下にしよう・・・)という動きです。

私は根が素直でないからでしょう、このような住宅業界を取り巻く動きをちょっと距離を置き、冷ややかに見ています。

どんなムーブメントにもその蔭に必ず利益を享受している「仕掛け人」がいるものです。

もともと、日本で「高気密高断熱」を広め、ムーブメントとして育て上げた主体勢力は、「断熱材メーカー」です。ご存じのように、現在では何百種類もあるであろう独自工法を開発し、住宅メーカーにそのノウハウを提供し、その対価として断熱材を販売してきました。

断熱材をまったく使用していなかった日本の家から比較すると、断熱メーカーが一定の貢献をしたことは明らかでしょう。

しかし、トータルな視点で、今もなお、日本の家づくりのレベルを上げることに貢献しているのかどうかを、冷静な視点で総括する時に来ているのではないか?と私は考えています。

数百種類にもなるであろう雑多な住宅工法の出現は、住宅資材メーカーの販売戦略に乗っかった工務店と一般ユーザーを幸せにしたのだろうかと・・・?

建築学の教科書の中で「断熱」は「温熱環境」という一分野にしか過ぎず、その他に「材料」「構造」「設計」「意匠」といういくつものエレメントがあります。

「断熱」一辺倒は、そのほかの建築エレメントを犠牲にしてしまっていることもある・・・というのは建築では当たり前の常識です。

温熱環境はデータが明確に採れるがゆえに、大学や研究所の研究テーマにしやすいのは確かですが、断熱スペック至上主義が「建築」という有機的な生き物を殺してしまうことになりはしないか・・・?と危惧しているのは、私だけではないのです。