書評 野村監督の『オレとON』

2013/01/09(水) 未分類
野村監督(現在は監督ではないがそう呼ぶ)の野球分析は緻密で的確である。なにより読む者への説得力という点で右に出る野球人は見あたらない。

私自身、王さんや長島さんの出場する巨人戦を毎日テレビに釘付けで眺めていた世代であるが、野村監督は自ら月見草と表現するとおり、王さんや長島さん、巨人軍の陰に隠れて、ほとんど野球選手として活躍した映像の記憶がない。

ところが、本の巻末資料を見て驚いた。野村監督は選手として、本塁打通算成績657本なのである。これは日本人で王さんに次ぐ歴代2位の記録である。(現在のずんぐりむっくりの体型からはちょっと想像しずらい・・・?)

本題は野村監督の記録ではない。そのたしかな野球観である。

V9時代の巨人軍は川上監督のもとで、
「巨人軍は常に強くあれ」「巨人軍は常に紳士であれ」「巨人軍はアメリカ野球に追いつけ、そして追い越せ」
を球団理念として無敵のチームを創り、他の野球人も敬意を感じていた。

その背後にあったのは川上監督の選手に対する人間教育だというのである。

ところが、選手としては誰も真似の出来ないオーラを放っていた長島さんが監督として巨人軍を采配した時期を契機に、巨人軍は大きく体質を変えてしまったのではないかというのだ。

たしかに、球団の財力を背景に他球団の主力選手をかき集めたスター軍団は話題を呼んだけれど、球団に培われた理念と、人間教育という基本ががおろそかにされたために、常勝軍団にはほど遠い結果しか出せず、尻切れトンボで終わってしまった感がある。

長嶋さんは選手として天才肌で知られるが、偉大な選手が偉大な監督になれる訳ではないといわれるように、自分の指示どおり選手がプレーできないのがどうにも理解できなかったのかもしれない。

チーム運営では、共通の明確な理念の大切さと、選手の技術教育の前に、人としての基本の人間教育がおろそかになっていては、常勝軍団をつくることは難しいというのが、この本の結論というところであろうか。

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