●「高気密高断熱」は「日本文化」を駆逐してしまう?

2008/07/18(金) 未分類
一人の工務店の社長の立場で書かせていただきます。

「ゆい工房」や「エアパスグループ」に対し、「高気密高断熱」工法のスキームとは違う、第三の枠組みを追求しているからでしょうか、多くの誤解があるようです。

私は「高気密高断熱」工法のロジックそのものが間違いとは思っていません。

それどころか、「高気密高断熱」工法が日本に紹介されていく過程で、日本の家の断熱性能を高めることに貢献したことは評価されなければならないでしょう。

大学の研究室で出された温熱環境のデータも正しいでしょう。私は何も疑ってはいません。(そのカテゴリーでの真理として)

しかし、問題はここからです。

研究者の皆さんが研究した「高気密高断熱」工法のロジックを実際に家造りに落とし込んでいくのは、工務店なのです。

「断熱性能」が良く「気密性能」が良い家をつくり、「計画換気」を実施する。数値目標を達成しようと必死になると、地場の工務店は、「高気密高断熱」工法は家造りに多くの制約があることに気がついたのです。

「気密性能」を高めるためには、引き違いのサッシは△。大きな窓も△。木がやせてしまうので、無垢材は△、などなど・・・。

実は、伝統的な「日本家屋」の形である、縁側のある開放的な家を「高気密高断熱」というロジックを厳密に遂行したら、建築は限りなく難しいでしょう。

家が、「パネル化」の方向に進み、「シンプルな箱」となり、家の外観が洋風化(窓が小さいため)の方向に進む・・・。

研究者にとっては「高気密高断熱」工法が温熱環境の分野における「真理」であるかどうかが最大の関心事なのだと思います。

ところが、「家づくり」は温熱環境の分野だけ良ければいいというような単純なものではありません。

「家の外観意匠の問題は、私たちの関知するところではありません。工務店の皆さんが創意工夫で乗り越えていくべき課題です」という声が聞こえて来そうです。

家の「高気密高断熱化」推進により、工務店の建てる家がパネル型の家に適したシンプルな箱形の家になってしまったことは、「高気密高断熱」の普及における負の資産ではないでしょうか。

「高気密高断熱」工法に取り組んでも、工務店だからこそ創ることができる日本家屋の意匠を地場工務店が捨ててしまったとするなら、日本家屋の品格がどんどん低下しているとしたら・・・。

工務店にとってこれ以上不幸なことはないでしょう。

日本の家造りが貧相にならないような、「高気密高断熱」に替わる第三のスキームがないだろうかと私たちは真剣に考えているのです。